なぜトランス状態にする？

あなたに１つお願いです。

心に強く残っている、幼い頃のエピソードを１つ、思い出して頂くことはできますか？

私はこの質問でいつも、熱々のお好み焼きの鉄板に手を乗せて、大やけどをした思い出が真っ先に出てきます。
痛みをもって学んだ、強烈な思い出です。

さて、今回はヒプノセラピーにおいて、なぜ、わざわざトランス（催眠）状態に相手を入れるのか？を
幼い頃の思い出に絡めてお伝えしていこうと思います。

そもそもトランス（催眠）状態って？

トランス状態とは、

• 注意が一点に集中している状態
• “信じられない”という気持ちが自発的に停止している状態
• アクティブに想像力が働いている状態

であることを前のブログにてお伝えしました。
もちろん、それ以外にも様々な特徴がありますが、今回はこの３つを押さえて頂いていれば話に入っていくことができます。

質問です！

「 卵１０個を、一口で食べることはできますか？ 」

そう聞かれた時、真っ先にどんな反応が出たでしょう？

多くの方は、「無理」「できない」「わからない」という反応だったのではないかと思います。

また、仕事の場だったり、セラピーやコーチングの現場では同じように

「できません」「無理です」「不可能です」

といった言葉を耳にすることが多々あります。
また、そうとは言わないまでも、言外に無理だと伝えているケースもあります。

この発言の後には必ず理由が続くわけですが、そもそもこうした反応は、いったいどこからくるのでしょう？

「 私にはできない 」は、どこからくるのか？

例えば、勇気を振り絞って異性に告白するたびにフラれてきた人（Aさん）がいたとします。
するとAさんは、やがてこう思うようになるのではないでしょうか？

「自分はモテないんだ。告白しても傷つくだけだから、もうやめよう。」

そんなAさんに対し、あなたが「結婚しないの？」などど聞こうものなら、たちまち

「無理無理！私に結婚なんてできないよ！」

と言われてしまうでしょう。

このように、私たちは経験の中から学習し、やがて自分の世界の「真実」をつくり上げていきます。
セラピーにおいて、「 事実は１つだが、真実は人の数だけ存在する 」と言われるのはこのためです。
そしてAさんは、「 私はモテない。」という真実をつくり出すことに成功しました。

また、余談ですがネガティブな体験はポジティブな体験よりも、鮮烈に記憶に残ります（Negativity Vias）。
加えて催眠における暗示の性質の１つに、

「 強烈な感情を伴うと、暗示の効果はさらに高まり、瞬時に定着する 」（感情が暗示を強化する）

というのものがあります。

したがって、たった１回の体験でも、そこにネガティブな強い感情が伴えば、Aさんで言うところの「私はモテない」が定着しやすくなってしまうわけですね。

さて、ではこの「私はモテない」と信じているAさんが、「結婚したいんです」と本気で相談してきたら…

あなたはどうしますか？

誰もが勘違いしている〇〇

人は皆、生きていく上で大切にしていることがあります。
それは生きてきた経験を通して、教訓のように刻まれてきたものです。

そしてここで、１つお伝えしなければならない事実があります。
それは当たり前すぎてほとんどの人が気付いていない…と言うより、つい忘れていることなのですが、

「 一生使える、万能なものなど存在しない。 」

ということです。
これはどんなに素晴らしい考えでも、どれだけ偉大な人の教えでも例外ではありません。

なぜなら、一度身につけた学習（思考、振る舞い、価値観、信念）というのは、時代の流れや自身を取り巻く環境によって、「正しい・間違い」「良い・悪い」「望ましい・望ましくない」が変化するからです。

一度身につけた学習というのは、例えるなら、お風呂のようなものです。
一度入れば、もう入らなくても一生きれいな体のままで過ごせる…と考える人は少ないでしょう。
毎日入り、古いアカを洗い流して、磨き上げるからこそ気持ちよく過ごせるというものです。

このように学習というものも、時代や取り巻く環境に合わせ、どれだけ柔軟に変化させられるかが、不快からの脱却と望む結果を手に入れることに繋がるのです。

催眠状態を利用して、アップデートしよう！

私たちの意識は、変化するという柔軟性を備えています。
そして、古くなって今の自分には役に立たない学習は変えていくことができます。

先ほどのAさんの「 私はモテない 」という考えを例にしましょう。
「 結婚する 」というゴールに向かう上で、「 私はモテない 」という考えは役に立ちません。

しかし、シンプルに「 大丈夫！恋人を作れるよ！一歩踏み出そう！」といっても、
Aさんには到底信じられない、受け入れられない考えです。行動は変わらないでしょう。

そこで、催眠の出番です。催眠状態では、

「 “信じられない”という気持ちが一時的に停止する 」

とお伝えしました。それはつまり、

子どものように純粋な心で、あるがままに学習することができるということです。

それによって、自然な形で、自らを縛る古い思考から、欲しいゴールを手に入れるのにふさわしい思考に、

アップデートすることができるのです。