2023.10.08
脱!人間関係の悩み① 〜原因と解消法〜
- あの人のことを考えただけで憂鬱になる
- 人間関係に疲れた
- 嫌がらせをされて腹が立つ
あなたもこのような思いをされたことは、一度や二度あるはずです。
例えば仕事という場面では、職場での人間関係は、「仕事を辞めたいと思う理由」、「退職した理由」のアンケート調査で必ず上位に入ります。
心理学者のアルフレッド・アドラーは、
「 人生で起こる悩みは、人間関係に起因する 」
と言っています。人間関係の悩みは、社会的動物である人間と切っても切り離せない悩みと言えるでしょう。
したがって、人間関係の悩みに対処する術を身につけることは、この社会に適応し、快適に過ごしていくための必須条件と言うことができます。
そこで必要になるものは、大きく2つに分けられます。
- 人間理解
- 対人スキル
今回は、最も重要で、最初の一歩でもある「人間理解」についてご紹介していきたいと思います。
人間理解
世界No.1コーチのアンソニー・ロビンスは、
「コミュニケーションの質が、人生の質を左右する」
と言っています。そして、世の卓越したコミュニケーターたちは皆、人の心を熟知している専門家でもあります。本当に人が欲しているものを与えられる存在になると、コミュニケーションは文字通り「無敵」になります。今回はその中でも絶対に押さえておくべきポイントについてご紹介していきます。
① 生物の(究極的な)生きる目的とは?
生物の生きる目的をあなたはご存知でしょうか?
全ての生物は、この大原則の元で動いています。それは…
- 生き延びていくこと
- 遺伝子を残そうとすること
この2つになります。そして人間とは、
自分にメリットがあると感じる人との時間はいくらでも作りたいと感じるものです。それこそ、お金を出してても作りたいと感じます。一方で、自分にメリットがないと感じる人との時間は、1秒たりとも作りたくないと感じます。
理由は明白です。自分にメリットある人との繋がりを積極的に持てば、生き延びて、遺伝子を残せる可能性が高まります。そのため、優れた情報や知識、能力、人脈を持っている人、いざという時に助けてくれる人、自分にプラスになるであろう人との繋がりを、積極的に持とうとする本能が備わっているのです。
さて、そこで質問です。
あなたという存在はお相手から見て、メリットがある存在と認識されているでしょうか?
② 知覚は投影
こんな経験はないでしょうか?
「あの人は、いつもズバズバと言いたいことを言って、配慮に欠ける人だな…💢 私はこんなにも周りに気を遣って、慎重に言葉を選んで話しているのに・・・ほんと理解できない!無神経な奴だ!💢」
もし、このような思いを感じたことがあれば、あなたの中には
「言いたいことを、はっきり言うのは良くないことだ。」
というビリーフ(自身のルール、思い込み)があるかもしれません。
あなたはきっと、本当は自分の意見や考えをしっかり持っている人なのでしょう。しかし、ビリーフによって、それを人前ではっきりと表現することができず、行き場のない感情を感じている状態なのかもしれません。
そんな中、それができる相手(言いたいことをはっきり言う人)が目の前に現れたとき、許せなかったり、イライラしたりするといったことが起きます。
あなたは、「ズバズバと言いたいことを言って無神経な奴だと周りに思われたくない」とか、「人を傷つけたら周りから孤立する」と無意識に考えているので、それにつながる行動を避け、感情や本音を抑え込んでしまいます。
これが抑圧です。
そして私たちが日常でするコミュニケーションはテンポ良く流れていくので、自分の発した言葉や行動にビリーフが投影されているということに、なかなか気付くことはありません。
このように、知覚された(起きた出来事に対して何らかに意味付けがされた)ものには、無自覚に、無意識に自分の心の状態やビリーフを映し出してしまっている(投影された)ものなのです。
ここから、「知覚は投影」という言葉が生まれました。
私たちが知覚するものは全て、自分の内側にあるものなのです。
レゲエの神様と言われるボブ・マーリーは、極めて核心をつく名言を残しています。
「指をさして人を非難する前に、君のその手が汚れていないか確かめてくれ。」(ボブ・マーリー)
③ 価値基準(価値観)とは?
人にはそれぞれ、譲れないもの、大切にしていることがあります。
そして人は、それを判断の基準として、物事の良し悪しを決定づけます。
この、大切にしている物事や考え方のことを、心理学では「価値基準(価値観、クライテリア)」と言います。
この価値基準は、私たちの目的や方向性に多大な影響を与えるだけでなく、行動の動機にもなるものです。
価値基準には階層がある(クライテリア・ラダー)
人が大切にしているものは、1つに限定されるものではありません。
必ず1つのコンテクスト(人生、仕事、プライベートなどの特定の文脈・背景・場面)には、多数の価値基準が存在します。そして面白いことに、それら価値基準は、人それぞれ優先順位があり、無意識に順位づけされているということです。
例えば、『人生』において大切なこととして、
Aさん:①笑顔、②家族、③友人、④時間、⑤仕事、⑥お金、⑦出世
Bさん:①仕事、②出世、③お金、④名誉、⑤時間、⑥人間関係、⑦家
であったとします。
価値基準は、上位にあるものが満たされていくと、 「人生の充実度」「人生の満足度」につながっていきます。
つまり、私たちの思考や行動の奥深くには、「価値基準を満たしたい」という動機があるのです。
もし、価値基準が相手と異なったら…?
ではもし、上記のAさんとBさんがご夫婦だったら、何が起こるでしょう?
Aさんは、人間関係や家族など、主に「人」を大切したいと考えています。一方でBさんは、「仕事」が何よりも大切だと考えています。このように価値基準が2人の間で大きく異なる場合、それぞれの思考や行動の優先順位も変わってしまいます。
Aさんは、Bさんに対し、家族を大切にしてくれない…と感じるかもしれません。
一方のBさんは、自分はこれだけ仕事を頑張っているのに、家族は自分のことを全く理解してくれない…と嘆くかもしれません。
このように、お互いが「大切にしていること」がズレていると、一緒に生活する中で食い違いがますます重なっていき、精神的にも辛くなってしまいます。そして、相手の大切にしている価値観を否定したり、軽視することにつながってしまい、最悪な場合、関係性にヒビが入る、なんてことにもなりかねません。
これらはそもそも、お互いに相手の価値基準を知らないために起こることでもあります。
価値基準のまとめ
自分にとって正しいこと、大切にしていることが、相手にとってはそうでもないことがあります。逆に、相手が大切にしていることが、自分にとってはそうでもないことがあります。
くり返しになりますが、人にはそれぞれ大切にしているもの、異なる価値基準があります。
ですので、互いに気持ちの良い関係性を築くために、『相手の考えを尊重する』というコミュニケーションの大前提を胸に刻んでおきましょう。
④ 自己重要感とは?
人の深層心理には、自分を認めてもらい、自分の存在価値を高めたいという強力な欲求があります。
そして、人は心の深いところで
- 『 自分自身のことを価値ある存在だと思いたい 』
- 『 他人からも、価値のある存在だと思ってもらいたい 』
と常に思っています。
このように、「自分は重要な存在であるという感覚」、「自分は価値のある存在であるという感覚」のことを自己重要感といいます。
自己重要感は、自分の幸福感や他者との人間関係に大きな影響を与えます。
そして、自己重要感を高めるには「自己承認」と「他者承認」の両方が必要です。
マズローの欲求階層説
心理学者アブラハム・マズローは、「人間は自己実現に向かって絶えず成長する生き物である」とし、「自己実現理論」を打ち立てました。これは、人間の欲求を5段階で理論化したもので、「マズローの欲求階層説」とも呼ばれています。
マズローによると、欲求とは下層から順々に満たされていくものであり、途中でどれかの欲求が満たされないと、次の欲求を充足することはできないとしています。特に、「欠乏欲求」は不足していると、なんとしても満たしたいという強い欲求に変わります。
さて、あなたはどの欲求が足りていないと感じているでしょうか?
あなたが問題だと感じているお相手はどの欲求が足りていないのでしょう?
余談ですが、欠乏欲求と成長欲求のこれら5つの欲求全てを満たした「自己実現者」は、快適な他者関係を構築・維持する力が強く、自発的に行動することができるため、他者からが極めて魅力的に映ります。
もしあなたの周りで魅力的に映る方がいたら、どのようにして欲求を満たしているのだろう?という観点で観察してみるのも面白いかもしれません。
2つの承認欲求
すでにお気づきかもしれませんが、現代社会で暮らす人の多くは、承認欲求が不足しがちです。
そしてこの承認欲求には、大きく2つの種類あります。
自己承認欲求
周りからどれだけ認められていても、自分で自分のことを認め、受け入れることができなければ、永続的な幸福感を得ることは難しいものです。このように、自分の存在を自分で認めたいという欲求を自己承認欲求といいます。
他者承認欲求
どれだけ自分のことが大好きで肯定・承認できていても、周りから認められているという感覚がなければ、孤独を感じながら生きていくことになるかもしれません。このように、他人から自分の存在価値を認められたい、尊重されたい、という欲求を他者承認欲求といいます。
自己重要感 = 自己承認+他者承認
自己承認ができている人は、「ありのままの自分で大丈夫」と思うことができます。自分のいいところも悪いところも含めて、「ありのままの自分で大丈夫」という自分の存在を肯定する感覚を持つことができます。
逆に、自己承認ができない人は、仮に人から褒められても、ありのまま受け取ることができません。「そんなわけない」「どうせお世辞だ」「私のことを全然わかっていない」といった感覚が生まれてきてしまいます。
セルフ・イメージ
自己承認ができ、「ありのままの自分で大丈夫」と思えるかは、ビリーフ(思い込み・ルール)とセルフイメージが関わっているといわれます。
ビリーフとは、自分が真実だと信じている信念や思い込み、ルールのことをいいます。「知覚は投影」のところでお伝えした通り、このビリーフがあるため、自分の中の本心を他人に投影してしまうことがあります。
セルフ・イメージとは、「自分について、抱いているイメージ」のことを指します。
要は、「自分に対するイメージ・印象」のことです。
- 自分のことをどんな人間だと思っているのか?
- 何が得意で、何が苦手だと思っているのか?
- 何が好きで、何を嫌いだと思っているのか?
- 自分は周囲からどう見られていそうか?
これらのことを「セルフ・イメージ」と言います。
(セルフ・イメージの詳しい内容は、今後のブログにてご紹介いたします。)
そして、このセルフ・イメージは、何かがうまくいかなかった時や、失敗した時、その人の思考や行動に大きな影響を与えます。
●セルフ・イメージの低い人
- すぐ傷つき、言い訳をしたり、他人のせいにしたりする
- 立ち直り(レジリエンス)が遅く、過剰に自分を守り始める
- すぐにあきらめ、チャンレンジすることをやめる
●セルフ・イメージの高い人
- 「絶対にできる」と思っているので、すぐに切り替え、策を考えて行動に移せる
- 起きたことに対し、成功・失敗という見方ではなく、「ただの結果」というフラットな目線で捉え、そこから「改善のための学び」をキャッチできる
- 楽観的に、余裕を持って対処できる
「ありのままで大丈夫」と思えるように、まずは自分自身について今、どのように捉えているのか?どんな人だと言えるのか?振り返ってみましょう。
私たちが普段している自己重要感を満たすための行動
くり返しになりますが、私たちは心の奥深くで、自分には価値がある人間だと思いたい欲求があります。
ですので、私たちは自分で自分を承認するために日々たくさんの努力をしています。
●望ましい自己重要感の満たし方
以下に挙げるのは健全な方法で自己重要感を満たそうとする承認行動です。
- 自己承認の努力
- 認められようとする努力
- ブランド物や高価なものを身につける
- 寄付をする
●望ましくない自己重要感の満たし方
一方で、自信を失ってしまったり、セルフ・イメージが低い状態の時には、自分で自分を承認することができません。すると、他人から認められるために、 はたから見ればちょっと痛い行動だったり、時には迷惑だと思われるような行動、人への嫌がらせとなる行動をとってしまうこともあるのです。
- 横柄な態度
- やたらと多い自慢話(同じ武勇伝の話を繰り返す)
- 他人の注意を引くための病気(二次利得)
- 人の話を奪う、話の中心になろうとする、人をけなす、悪口を言う
これらは、周りを下げることで、あたかも自分の価値が高まったような錯覚を感じることができるため、自己重要感の低い人はやりがちな行動です。
自己重要感は変動する
自己重要感は、一度満たせば一生満たされっぱなしになるようなものではありません。
これはお風呂のようなものです。お風呂は一度入れば、一生きれいな体で人生を過ごせる、というものではありません。毎日入って、古い垢を落としてこそ、日々を気持ちよく過ごせるというものです。
ですので、自己重要感は、日頃から満たすための承認努力が必要です。逆にこれを怠ると、これまで良好な関係だった人が、急に妬んだり不満を言うようになってくることもあります。そんな時は、「自己重要感が満たされていないのかもしれない」と考えることができるでしょう。
自分の大変さや忙しさをアピールしたり、こんなに頑張った、と頻繁に口に出す人がいれば、周囲からの承認が必要になっているサインだと捉えることができるでしょう。
頑張っているのに、報われない、誰にも認めて貰えない、褒めてもらえない…
そんな状態なのかもしれません。
これは放っておいてしまうと、どんどん自己重要感が下がってしまう可能性があります。
現代社会において、社会的地位に限らず、ほとんどの人は自己重要感が完全には満たされていません。ですので、誰もが「承認」を求めているのです。
⑤ 肯定的意図
人間のあらゆる行動には無意識レベルでの「肯定的な目的」がある、といわれています。これは一見ネガティブに思える行動でも、その人にとって重要な、ポジティブな目的があるということです。
例えば先の例で言えば、横柄な態度を取るのは、「自分の存在価値を高め、安心したい」という無意識でのポジティブな目的が隠れているということができます。
タバコを吸う人であれば、タバコを吸うことで安心したい、リラックスしたい、というポジティブな目的があるということができます。
ポイントは、その行動をとっている本人はそのことに気づいていないことが多い、ということです。無意識にその目的を満たそうとして、特定の行動が選択されているケースが多いのです。
もしお相手の行動を見たとき、ネガティブに思えるような行動をしていたら、
「その肯定的な目的(肯定的意図)はなんだろう?」
と探求してみてください。それを満たしてあげられる代替案を提示することができれば、お相手はその行動から望ましい行動へとスムーズに切り替えていくことができるでしょう。
まとめ
ここまで読んでみて、いかがだったでしょうか?
すでにお気づきかもしれませんが、人間関係の問題は「お相手だけが悪い、とは必ずしも言えない」ということです。「知覚は投影」でもお伝えした通り、相手は自分を映し出す鏡でもあります。
あなたが人間関係で何かしらの問題を感じたら、まずは一度これらの視点で、お相手と自分自身を深く探求していただくことをお勧めいたします。
次回は、これらを踏まえた上での実践的なスキルについてお伝えしていきます。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。
Story Notes ヒプノセラピー&NLPスクール
設楽 貴之