2023.07.01
変化の種のありか
たまたま投げた、その中に…
「え!?なんだこれ!!」
小学校からの帰り道、僕は石ころだらけの駐車場にいました。
帰り道で見かけたトカゲを捕まえようとして、駐車場に迷い込んだのでした。
「全然出てこない。諦めるかぁ…」
岩の隙間に逃げ込んで出て来なくなったトカゲに愛想を尽かし、手近にあった石ころを投げたその時でした。
パカっと割れて、中から…誰がどう見ても『アレ』にしか見えないものが出てきたのです。
ゴミ捨て場の教科書
「まだ新品じゃないか…」
僕の家は、普通の一般家庭でした。なので高校指定の参考書も、両親のおかげで買うことができました。しかし、僕にとっては当たり前の参考書も買えない友達がいました。
名前はレンくん。
シングルマザーのお母さんと二人暮らしで、弁当はいつも白いおにぎりだけでした。
参考書も買ってあげられない…さぞ、お母さんも心苦しかったことでしょう。
そんな僕たちのいた高校には、校舎の裏手側にゴミ捨て場がありました。
そのゴミ捨て場でな、新学期前になると、先輩や先生方の古い参考書や問題集が、山のように積まれました。レンくんはそこで、前年の古い問題集と参考書を拾っていました。
「まだ新品じゃないか。ラッキー!」
彼は、それを「ラッキー!」と言うのです。
「レン、それ古いし僕の問題集と参考書を使いなよ。」
僕はそんなゴミを拾うくらいなら、どうせ使うことのない僕の新品を使って欲しいと思いました。
しかし、その度にレンくんは言いました。
「それは参考書以上の価値があるんだよ。」
僕はその時、レンくんが言っている意味がわかりませんでした。
奥深くにあるものの正体
「お客さま、ご存知ですか?真珠って…」
私はパートナーへの特別な贈り物を選びに、銀座のジュエリーショップに来ていました。
そのお店でふと目が止まったのは、意外にも真珠でした。
宝石の中でも珍しく、真珠は生物が生み出す宝石です。
その店は世界でも有数の真珠を取り扱っている専門店で、私はあまりにも美しい真珠に目が吸い込まれました。
それを見ていた店員が、私に教えてくれました。
「真珠ってこんなに美しいのに、元は貝の中に入ってきた異物、ようはゴミなんですよ。」
店員なのに、この人は売る気があるんだろうか?と思いながら私は続きを聴きました。
「でも、それを貝は何年も何年もかけて、今あるものをくっつけてくっつけて作っていくんです。1つの命の歴史なんですよ。とても素敵だとは思いませんか?」
私は、生まれて初めて真珠に敬意を感じました。
「真珠に込められた意味をご存知ですか?それは…」
最も価値のあるもの
ジュエリーショップのお姉さんが教えてくれました。真珠に込められた意味は、
『あなたと共に、涙を流します』
なのだそうです。相手の喜びや悲しみに寄り添い、敬意を示します…という意味だそうです。
最も価値のあるもの…それでもまだ、“ゴミ”だと言えますか?
言葉の重み
私は今でも、レンくんの言葉を思い出します。
今でこそ、彼が何を言いたかったのか痛いほどよく分かります。
そんなレンくんは、京都大学に合格しました。
参考書を買う金もない一人の学生が、どうして京都大学に入ることができたのか…
きっと、その理由を知るのは私と…そしてこれを読んでいるあなただけでしょう。
よく定番の質問として、「あなたが尊敬する人は誰ですか?」というものがあります。
もし私がそれを聞かれたら、迷わずこう答えると思います。
「親友のレンくんです。」
石の中にあったもの
たまたま投げた石ころ…その中から出てきたのは誰がどう見ても、
大粒の金の塊でした。
あの駐車場の石ころは今頃どうなったかなぁ…
ニュースになっていないところを見ると、きっと誰にも見つかってないのでしょう。
見た目が、なんてことない石ころなのですから。